「英語能力ランキング 日本は過去最低の92位 若年層が低迷」
https://news.yahoo.co.jp/articles/4d88bd850aa9d17a9a79a292514541e8d29628e7
ショッキングなニュースでした。
なお、英語以外については日本の教育の状況は悪くないはずです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231205/k10014278531000.html
ゆとり教育の見直しが始まって、20年ほどがたちました。それ以降、教科書は改定されるたびに難しくなっていって、他の教科はそれほどではないのですが、英語の中学校教科書は現在間違いなく過去最高の難易度になっています。
小学校での英語教育も始まって、30年前の親世代と比べると、中3終了時までに教科書に登場する英単語数は約2倍に増えています。
大学入試における英語試験も難易度があがっていて、共通テストの単語数は30年前の共通テストと比べて1.5倍以上に増えています。
とりわけ、前回の教科書改定では英単語ばかりではなく、文法面でも高校生内容が中学校に多く降りて来ました。
・現在完了進行形
・原形不定詞
・仮定法過去
などです。
来年度の教科書改定はカリキュラム自体は変化しない小改訂になりますが、きっとまた少なからず難易度が上がるでしょう。
教科書の難易度が上がって、英語が分からないと言う生徒は増えました。
当塾は、受講する教科やカリキュラムは生徒一人ひとりにあわせてプランニングする個別指導塾ですが、他の個別指導塾でもそうであるように、昔から一番人気の科目は「数学」です。しかし、前回の教科書改定から英語が分からないという生徒の需要が増加し、一番人気の「数学」と二番人気の「英語」の需要が拮抗しています。
塾の経営的には悪いことではないのですが、子どもの教育という意味では少し微妙です。
では、学校の英語教育はこれまでどう変化してきたのか確認します。
・ 扱う単語数が増えた
・ 4技能(読・書・聴・話)を意識するようになった
・ 会話表現を重視するようになった
・ 「実用英語」をテーマに実際の英語(とくに日常会話)で使う英語表現を優先的に扱うようになった
4技能については、30年前の親世代の英語教育が、「文法(グラマー)」と「読解(リーディング)」の2つで、その後に文法がだんだんと軽視されるようになり、リーディング(読)とリスニング(聴)の2つを重視するようになって、その後に4技能を重視しようと言われるようになってきています。
また、重視されるようになった部分があるように、軽視されるようになった部分もあります。軽視されるようになったのは、「分かりやすさ」と「英文法」でしょう。
英文法というのは、英語の文におけるルールの部分なのですが、英文法はあくまで学習上の補助であり、英文法至上主義の英語教育は好ましくはないというのは分からなくはありません。ただ、英文法について力を入れなくなったことで、授業が分からなくなったという生徒が増えたのも間違いのないところです。
例えば、前回の教科書改定では、現在完了進行形が中3内容に導入されましたが、未来完了や過去完了はすっとばして、また現在完了の受動態なども扱わず現在完了進行形だけ単発で学習します。
仮定法も過去完了形を学んでないので、仮定法過去だけで、仮定法過去完了は学ばないという中途半端な指導になります。
疑問詞のwhomも学ばないので、関係代名詞のwhomも学ばず、主格の関係代名詞はwho、which、thatで、目的格はwhichかthatと教えられます。目的格でwhoが使えないことに対してのフォローはありません。whomは堅苦しく古臭い表現で、日常英会話ではほぼ使われないからということでしょう。
また、高校英語のレベルでは、難解な英文解釈だとか、文構造が複雑な英作文などは軽視されるようになっています。平易な文を早く読み解く力、平易な英語で自由に表現する能力などが重視されるようになってきています。
よく使う表現だけ先に教えることにしたということなのでしょうが、分かりやすさ、体系的な知識の整理と考えると、生徒が苦労する構成になっています。
実用英語を重視するというのは間違った方針だとは思えませんが、その背後で、ひっそりと切り捨てられてしまったものが、ほんとうに切り捨ててよかったのか問題なのではないかと思えます。