2月25日(一部26日)に国公立前期試験が行われました。
そちらの結果はこれからですが、私立大学の前期試験の結果はおおよそ出そろいました。
当教室や他塾様の様子を見ると、今年の愛知県の私立大学の入試は、近年ではもっとも厳しい結果だったと思います。河合塾や駿台が出している合格予想と比べ、全般的に厳しめに合否を出している大学が多いようです。
河合塾や駿台が出している合否予想は、原則的に前年度までの合格水準をもとに算定されています。ですので、前年度と比べ、全体的に基準が変わると当てにならないこともあるのでしょう。
そうなった理由の一つとしては、愛知県の大学が他の地域より人気が上がってきているというのがあるでしょう。
まず、愛知県自体が他の都道府県よりも比較的に景気の良い地域で就職の状況も良いことから、愛知県の学生の多くが県内の大学の受験を選び、東京や他地域の大学を選ぶ生徒が減ったことがあるでしょう。
また、大学進学率が72.5%と国内でもトップ。とりわけ女生徒が大学進学を選ぶケースが増えて、競争率が上がっていることが理由にあげられます。
ただ、これらの問題は今年急におこった問題ではなく、近年ずっと言われていることです。今年が昨年や一昨年とくらべてとりわけ大きくボーダーが上がった理由はないかと調べてみると、ありました。
それは、私立大学の助成金についての情勢の変化です。
さて、私立大学の予算は、生徒からの「授業料」や「受験料」のほかに、国からの助成金が大きなウエイトを占めています。
実はこの助成金は、生徒を多く合格させすぎると、減額されたり、支給が停止させられたりするのです。
そもそも、私立大学の大学の定員は大学の申請に基づき、文科省の認可によって決められています。ただ、以前は多少の定員オーバーなら許容していいよね、という感じで運用されていたのですが、2018年から制度の厳格化が行われるようになりました。
具体的には、
定員充足率100%以下 問題なし/助成金の全額支給
定員充足率105%以下 軽微なペナルティ/助成金の若干の減額
定員員充足率110%以下 重大なペナルティ/助成金の大幅な減額
定員員充足率110%~ きわめて重大なペナルティ/原則,助成金の支給なし
およそ、100%,105%,110%のところに大きな壁があると思ってください。
これだけ聞けば、合格者をちょうどぴったり100%になるように出せばいいだけじゃないかと思われるかもしれませんが、私立大学の受験というのは国公立大学や他の私立大学と併願するのが当たり前です。せっかく合格を出しても、多くの合格者が辞退して、他の大学に逃げてしまうのです。
とりわけ、近年は私立大学の受験方式が多様化、複雑化していて、受験数も増えています。そうなるとどれくらい合格者を出したら良いのか、その見込みをたてるのが非常に難しくなります。
言ってみれば、私立大学の入試担当者は、合格者数を使って壮大なブラックジャックのゲームを行っているようなものです。
授業料をなるべく多くとりたいので、生徒数はなるべく増やしたい。
けれど、21(充足率100%)を狙いすぎて、ドボン(100%以上、105%以上)になってしまっては大敗。他のプレイヤー(他大学)の動向によって、合格者の辞退率は大きく左右するから、手札を読み切るのは非常に困難というわけです。
なお、実際には大学の規模や学部学科、各大学のそれぞれの事情などによって、ペナルティの程度は変わってくるようではあります。
ただこの制度の変化については私も2018年の時点で把握していました。制度の厳密化を段階的に進めていくという話は、そのころからの予定調和です。これだけでは、2026年度で急にボーダーが上がる理由にはなりません。
実はこれには、あと二つの要因が関わってきているのだと思われます。
① ペナルティの基準が新入学者の定員充足率中心から、四学年全体での定員充足率中心にシフトした
② コロナ化の影響
これを踏まえて,各年度の愛知県の私立大学の合格状況を時系列で追ってみます。
2010頃~2017 全体的に合格基準が甘め
ペナルティの厳格化前で、少子化と合わさって大学のレベルが全体的に落ちていました
2018 かなり厳しめ
例年になく受験結果が厳しい年でした。ペナルティの厳格化が始まったからでしょうね。各大学がビビりすぎて、合格者がかなり絞られました。
2019 やや甘め
前年に厳しくしすぎた反動、それから前年の結果を踏まえて高校側も慎重に出願するようになったためか、合格率はだいぶ上がりました。大学側も新しい制度の運用になれてきたのだと思います。
2020/2021 かなり甘め
コロナ化の影響で生徒動向が読めないというのが免罪符になったのでしょう。文科省がだいぶ甘めの運用をしてくれていたようです。
2022~2025 やや甘め
コロナ化を乗り越えまた少しずつ厳格な運用に戻ってきてました。しかしコロナ化時代の慣れで、まだまだ合格者を出し過ぎた大学が多かったようで、痛い目を見た大学が増えてきています。とくに、2024/2025では合格者を多く出し過ぎたと判断した大学は多いでしょう。
2026 厳しめ
2018に次ぐ厳しい入試結果になりました。具体的な定員充足率の結果が待たれます。
つまり、コロナの時期及びコロナ直後に甘く多くの合格者を出してしまったツケを大学側が今払わされているのです。
四学年全体での定員充足率が重視されるようになったので、一年多く合格を出しすぎると、その後四年間ずっとペナルティが重くなるわけです。
実際、どれくらいの大学が定員オーバーをしているのか、見てみましょう。
外部リンク
大学コンパス 2025 愛知県の私立大学 定員充足率ランキング
さて、愛知県内45の私立大学のうち、110%越えの特大ドボン大学を見ていきましょう。
【特大ドボン大学(110%以上)】
愛知造形大学 120.8%
愛知大学 118.3%
愛知工業大学 114.6%
日本赤十字豊田看護大学 111.0%
以上、4大学です。
造形大学はまさかの120%越えです。ブラックジャックでいうなら、すでに21が出てるのにカードを引いてしまったレベル。いくらなんでも欲張りすぎです。
名古屋にキャンパスを移してから、人気絶好調でブイブイ言わせてる愛知大学も2位にランクインです。就職サポートの手厚さで、一昔前とは格段に人気の上がった愛工大も3位です。
【大ドボン大学(105%以上)】
南山大学 109.3%
中京大学 108.2%
名城大学 107.3%
愛知医療学院大学 106.9%
愛知医科大学 106.6%
豊田工業大学 106.1%
中部大学 105.9%
志学館大学 105.9%
藤田医科大学 105.4%
名古屋学芸大学 105.3%
愛知学院大学 105.1%
多いですね!
2017年までや、コロナ時期はこれくらいのオーバーはなあなあでゆるされていたのでしょうが、判断が甘い大学が多かったですね。
それぞれたいそう痛い目をみたことでしょう。
【小ドボン大学(100%以上)】
愛知淑徳大学、名古屋外国語大学、人間環境大学,東海学園大学,一宮研伸大学
105%以下ならペナルティはありますが、だいぶ軽微です。100%以下が理想ですが、全然セーフですね。
【調整成功大学(90%以上)】
名古屋芸術大学,愛知東邦大学,同朋大学,愛知みずほ大学,椙山女学園大学,名古屋産業大学,名古屋文理大学
調整ばっちしです。ブラックジャックなら,20とか21をぴったり出せた感じですねうまくやりました。
【生徒数やや不足気味大学(80%以上)】
名古屋音楽大学 89.8%
名古屋商科大学 89.2%
金城学院大学 85.3%
豊橋創造大学 84.9%
修文大学 84.3%
名古屋経済大学 83.9%
日本福祉大学 80.5%
ちょっと削りすぎですね。このあたりになると,単に定員割れをして生徒が集まらなかったという大学も混じってきているかもしれません。
【定員割れ確実大学(80%未満)】
桜花学園大学 79.3%
愛知学泉大学 75.5%
星城大学 67.2%
名古屋柳城女子大学 57.9%
愛知文教大学 52.3%
愛知工科大学 52.0%
岡崎女子大学 49.5%
80%を切る大学の大半はいわゆる定員割れ大学が多いでしょうね。全国の他都道府県と比べると、生徒集めに苦労している大学は少ないです。どちらかというと、地方のアクセスの良くない立地の大学が多いですが、アクセスが悪くても実績を出している大学もありますよね。
2026年度,愛知県私立大学の入試が厳しかった理由まとめ
1.愛知県の大学の人気が他の地域より上がり気味
2.愛知県の大学進学率が特に急上昇
3.私大の助成金についての動向
特に、3の私大の助成金についてが分かりづらいところでしたので、詳しく解説をさせていただきました。
ただし、こういう分析も終わった後だからこそ言えるのであって、事前に予想がついたかというとかなり難しかったとしか言えません。行政の制度、各大学、受験性たちの思惑、コロナやそのたイレギュラーな事態からの影響など、考慮すべき要素はいくらでもあって、すべてを含めて計算するのは不可能といってよいでしょう。
いちばん情報を持っていて、本気で検証している大学側だって、予測がついていないから、こんなにドボンしまくるのですから。
それではなぜ、こんなにも私立大学側がこんなにも予測を外してしまうのか。これも入試制度の複雑化が大きな理由になっていると思われるのですよね。
次の記事で、最新の私立大学の入試制度の動向を振り返ってみます。



