2027年度の高校入試では、私立高校の合格ボーダーが上がりそうだという噂が生徒保護者の間でも広まっています。
全面的ではないのですが、一部の高校については正しそうです。
なぜ、ボーダー が上がりそうなのかというと、いくつかの私立高校で2026年度で生徒を多くとりすぎてしまったからです。
具体的には、近くの高校でどれくらい定員が充足しているかを調べて見ました。
高校名 | 募集定員 | 1年生在籍者数 | 定員比 |
|---|---|---|---|
岡崎城西 | 524人 | 710人 | 135.5% |
安城学園 | 533人 | 691人 | 129.6% |
桜丘 | 507人 | 614人 | 121.1% |
愛産大三河 | 430人 | 478人 | 111.2% |
杜若 | 270人 | 435人 | 161.1% |
光ヶ丘女子 | 310人 | 347人 | 111.9% |
豊田大谷 | 229人 | 304人 | 132.8% |
人間環境大附属岡崎 | 279人 | 235人 | 84.2% |
星城 | 545人 | 456人 | 83.7% |
豊川 | 500人 | 493人 | 98.6% |
学校によって、だいぶ差がありますよね。
とくに、安城学園高校と岡崎城西高校は定員超過率がかなり大きくなっています。
これは、昨年度にいわゆる私学無償化が始まり、私立高校の人気が高まった影響が大きいでしょう。
逆に、環境大付属岡崎高校や星城高校は定員にかなり不足していますが、これは不人気だったというより、私学無償化を警戒しすぎて合格基準を厳しくしすぎて結果でしょう。
この結果を踏まえ、特に2026年度で超過して生徒を取りすぎてしまった学校ほど、2027年度からの合格基準が高くなると予想されます。
どういうことかというと、これは私立高校の運営予算の問題になります。
私立高校に国や県から支給される経常費補助金が、収容定員を上限に支給される仕組みになっているからです。
具体的には、愛知県からの補助金は生徒一人あたり37万円程度が私立高校に支給されています。(このほか、特別指導教員の配置や教育条件の改善などに対応する補助もあります。)
砕いて言うと、各私立高校は収容定員までは生徒をできるだけ多く入れた方が補助金が入ってきて利益になるけれども、収容定員を超えて生徒を入れても経費が増えても補助金が増えずに赤字要素になる、ということです。
また、ここでいう収容定員というのは年度ごとの募集定員ではなく、学年全体の定員になります。つまり、ある年度で生徒を多く入れすぎるとその後の3年間ずっと足をひっぱることになります。(※公表されている収容定員は、安城学園で1680人、岡崎城西で1620人になります。)
ここまでの説明で、
「え、なんで定員オーバーさせたり、定員を割ったりしてるの? 募集定員ちょうどの生徒を入学させれば良いじゃない」
と疑問に思うかもしれません。
実際、公立高校の場合は定員360の高校の場合、定員ちょうどの360人を入学させます。
けれども、私立高校の場合はぴったりの生徒数を取るのが非常に困難な事情が存在しています。
それは、愛知県における私立高校の位置づけ、私立高校入試の入試制度の実情にからんでくる話になります。
まず、愛知県のでは、公立高校と私立高校では合格者を決める手順が異なります。
・公立高校の推薦入試
面接や入学資料等で総合的に判断
・公立高校の一般入試
筆記試験の点数と評定値(内申点)の合計点で機械的に判定
・私立高校の推薦入試
学校ごとの独自の基準で合否判定
・公立高校の一般入試
学校ごとの独自の基準で合否判定
公立高校の場合、先に推薦入試で適当な人数を合格させ、一般入試で合計点の高い子から順番に定員になるまで順番に合格者を決めていけば良いだけです。
だから、合格者=入学者という等式がほぼ成り立ちますので、入学者が多すぎたり少なすぎたりという心配はほぼありません。1-2人の誤差が出ることは、事情によりありえるのですけれども。
対して、愛知県の私立高校は学校ごとの基準で合否を決めることができるわけですが、実情として公立高校の滑り止めとして併願で受験することが多くなっています。
1.一般入試しか行わず、原則筆記試験の結果のみを見て合否を決める高校
東海高校・滝高校の2校のみ
2.推薦入試は内申点を中心に合否を判定し、一般入試は内申点と筆記試験等を総合的に判断して合否を決める高校
愛知高校・名城高校・中京大中京高校・名古屋高校など一部の人気校
その他の高校の特進系クラス
3.推薦入試も一般入試も内申点中心に合否を判定する高校
ほとんどの高校
大別すると、私立高校の合格者選定は、以上のように一般入試でもほぼ内申点のみで合否を判定している学校が多くなっています。
もちろん、ほぼ全ての私立高校で筆記試験は行われていますが、半ば茶番になっているのです。(半ば茶番であっても、完全に茶番ではありませんし、実施の意義はあります。詳しくは後述)
愛知県は、大勢についていえば、公立高校が私立高校よりも人気の高い県になります。
そのため、私立高校の一般入試は多くの場合「滑り止めの併願」として受験されます。はじめから私立高校に入りたい場合は「単願の推薦入試」で受験するのが一般的なのです。
ですので、例えば募集定員が500人くらいの私立高校で、推薦入試で合格を決めている生徒がすでに250人くらいいたとしても、残りの250人の枠のために、公立を一次志望にする生徒が大挙して受験することになります。
具体的には、3000人から5000人もの生徒が受験します。そして、私立高校側としては、その生徒たちの大半に合格を出します。もちろん、全員が入学するわけではありません。その大半は公立高校に合格することので、入学金の手付分だけ支払って、だいたいが辞退します。その中で、公立高校に落ちてしまった生徒だけが私立高校に入学することになります。
この流れをスムーズに行うために、「合格確約」と呼ばれることが多い仕組みが各高校にあります。
主に内申点などによって、一定基準をクリアしている生徒に受験前に中学校側と、高校側の協議で合格を約束してもらうというものです。
私立高校の中でも学校によって差はあるようですが、一般入試の合格者の8割から9割以上は合格確約をもらった上で合格させているようです。
合格確約基準の例
推薦入試
特進クラス 以下の条件をすべて満たすもの
9科内申点35以上(内申点1がある場合は不可)(事前相談で-1)
5科内申点20以上(事前相談で-1)
欠席が10日以上ある生徒は要相談
5科内申点学力奨学生制度あり
5科内申23で入学金・授業料相当額を給付
5科内心21で入学金・授業料の一定額相当額を給付
普通クラス 以下の条件をすべて満たすもの
9科内申点24以上(事前相談で-1)
5科内申点13以上(内申点1がある場合は不可)(事前相談で-1)
欠席が10日以上ある生徒は要相談
推薦入試
普通クラス 以下の条件をすべて満たすもの
9科内申点27以上(事前相談で-1)
5科内申点15以上(内申点1がある場合は不可)(事前相談で-1)
欠席が10日以上ある生徒は要相談
※ 筆記試験の結果次第で、特進クラスへのスライド合格あり
5科内申点学力奨学生制度あり(特進クラスに進学の場合)
5科内申24で入学金・授業料相当額を給付
5科内心22で入学金・授業料の一定額相当額を給付
つまり、以上のような基準が高校側から中学校側に事前に通達されていて、中学校の進路指導では中学の先生がこの基準をもとに受験校を勧めてくれるわけです。
逆にいうと、生徒や保護者が受験したいといっても、担任の先生がノーを言う場合はだいたいの場合、合格確約基準を満たしていないということになります。
ただし、事前の相談で合格確約の基準を1つか2つ下げてもらえることがあります。部活動等の実績で下げてもらえる場合もあれば、中学校側に人柄を保証してもらうことで下げてもらうこともあります。
そのあたりの相談を「事前相談」といいます。
高校側からすると、
「毎年◯◯中学校さんには人柄の良い生徒を送り込んでもらい、お世話になっています。
今年からは、◯◯中学校さんの事前相談で-1する枠を去年までの3名までから5名までに増やさせてもらいますね」
というようにして、受験者数を調整したりもします。
だいたいの場合、この事前相談の締め切りは12月の中旬頃に設定されている場合が多いと思います。2学期の期末テスト後の保護者面談で、スムーズに受験校を決めることができれば、十分に間に合うスケジュールです。
ただし、合格確約基準を満たしていない場合は、絶対に不合格かというと、それも違います。事前に中学校の先生から、高校の先生に伝えてもらいます。
「うちのこの生徒は、合格確約基準を満たしていませんが、どうしても貴校を受験したいようです。筆記試験の結果を見てもらえませんか。」
あるいは、
「この生徒は健康上の都合で、授業の欠席が多かったため内申点が悪くなってしまいましたが、人柄に問題なく学力もある生徒です。筆記試験の結果を見てください。」
というように、事前に話を通しておいてもらいます。
私立高校側としても、学力だけ高くても人間性や家庭環境などに問題のある生徒を軽々に入学させたくはありません。事前に中学校を通して人柄を保証しておいてもらわなければ、合格確約基準をクリアしていない生徒の場合、いくら筆記試験で良い点数をとっても合格はかなり困難になるでしょう。
以上のように、私立高校の一般入試はいろいろと複雑な事情があるわけですが、一番重要なポイントは多くの私立高校が内申点を中心に合格確約基準を決定し、中学校側に連絡しているということです。
私立高校側の立場からすると、補助金や助成金の問題がありますから、できるだけ定員ぴったりの生徒数を確保したいということになります。
これまで、私立高校は長年の経験で、だいたいどれくらいに合格確約基準を設定すれば良いかが分かっていて、昨年度の実績をもとに微調整すれば問題ありませんでした。
それでどの高校も、募集定員よりちょっと少いくらいのベストな生徒数をキープできたのです。
しかし、2026年に私立無償化が始まり、私立高校の人気が上がりました。
各高校はそれを踏まえて、多かれ少なかれ合格確約の基準を上げたわけですが、私立無償化の影響を過大評価して基準を上げすぎた学校、過小評価して上げ足りなかった学校がでたわけです。
結果から見れば、星城高校などが基準を上げすぎていて、安城学園高校や岡崎城西高校が上げたりなかったということになるでしょう。
普通に考えれば、昨年の実績を踏まえて各高校は2027年度入試の合格基準は変えてくるでしょう。
ですが、これは近隣の別の私立高校の動向にも左右されます。
例えば、光ヶ丘高校や星城高校が多く生徒を集めれば、安城学園や岡崎城西高校の受験者を減るでしょうし、その逆もしかりでしょう。
さらに、私立高校の動向次第で、公立高校の入試にも影響があるでしょう。
2026年度の公立高校入試では、安城学園や岡崎城西高校が定員以上に大きく生徒を確保してしまったことで、割りを食ったのが公立の下位校です。
2026年度は、碧南、西尾東、西尾などの人気校がややボーダーを上げたのにも関わらず、一色高校、吉良高校、刈谷工科などが大きく定員割れを起こしました。これは、安城学園や岡崎城西高校などが想定以上に多くの生徒をもっていってしまった影響が大きいでしょう。
昨年度は定員割れをしたこれらの高校ですが、2027年度は安城学園や岡崎城西高校が入学者数を絞りすぎた場合には、逆に倍率が一気に上がってしまう可能性も有り得ます。ただ、これは私立高校側の対応次第なので、本当に読めません。
これらの状況を踏まえ、だいたい予測される動向は以下の通りでしょう。
1.2026年度生徒を入学させすぎた高校(安城学園・岡崎城西)などは、2027年度の合格確約基準を上げてくる。
2.まだあと数年は各高校の判断次第で、合格確約基準が大きく乱高下する。
3.2030年頃までには落ち着きを取り戻すが、私立無償化前よりは少し高い基準で安定する。
4.私立高校の動向次第で、公立高校(とくに下位校)の受験者数が乱高下する。公立高校でも中上位校への影響は少い。
今年2027年入試からもう数年は、私立高校志望者や、公立の下位校の志望者の進路指導が難しくなりそうです。
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