2026年7月30日木曜日

塾説・怠人正機説


善人なほもつて往生をとぐ、いはんや悪人をや。


『歎異抄』第三条の有名な一節です。

浄土真宗の親鸞上人のお言葉で、

「善人でさえ往生できる。まして悪人はなおさらである」

という意味です。

一見すると「悪人のほうが善人より救われる」という逆説に見えます。ここでいう悪人は、単純な犯罪者や邪悪な人という意味ではありません。

自分の力や善行だけでは救われないと自覚し、阿弥陀仏の本願に身を任せる人を指しています。反対に「善人」は、自分の善行や修行によって救われようとする自力作善の人です。親鸞の考えでは、そうした善人も結局は阿弥陀仏の力によって救われますが、自分の無力さや煩悩を自覚している悪人のほうが、より直接的に他力本願へ向かいやすい、という論理です。

ただし、これはもちろん、

「悪事を働いたほうが得である」
「悪人であれば自動的に救われる」

という意味ではありません。むしろ「自分は善人だ」と思い込む自己正当化をひっくり返す、かなり鋭い人間観ですね。なお、この思想は一般に悪人正機説と呼ばれます。


これをもじって「塾説・怠人正機説」を唱えさせてもらいます。


勤人なほもつて成績を上ぐ。いはんや怠人をや。

(勤勉な人でさえ成績を上げられる。まして怠惰な人はなおさらである)


といったところでしょうか。

親鸞上人の教えのように、自分が怠惰だと自覚する方が良いというような、高尚な思想ではありません。

単に、塾として怠惰な人の成績は上げやすいというだけの話なのです。


さて、よく塾には「成績が上がらない」という生徒が多く連れてこられます。

今まで、他の塾に通って、毎日何時間も勉強させてもさっぱり成果がでない。評判の良い通信教育をやらせても、本人が真面目に取り組まない。

塾に連れてこられたそれらの生徒の保護者は、そんな風に説明します。

そんな生徒を眼の前に、やり手の塾屋さんは内心で思うのです。


「しめしめ、良いカモが来たな。

 この生徒は、成績が上げやすいぞ」


と。

そもそも、怠人である彼らはなぜ成績が上がらないのでしょうか。

多くの場合、その答えは簡単です。

彼らが、成績を上げたいと思ってないからなのです。

学校の教師や、保護者の方は「そんなことはない。勉強の大切さはくどいほどに伝えている」と言うかもしれません。けれど、断言します。伝わっていないと。


成績を上げるためには、順番があります。


① 成績を上げたいと思う

② 成績を上げるために勉強する

③ 成績が上がる


シンプルですが、この順番です。

無理やり勉強させられている生徒は、①を飛ばして②をやっているのです。これでは成績は上がりません。

成績は上げようと思ってから上がるものであって、上げようと思わなければ上がらないのです。


具体的に、成績を上げたいと思っていない子どもと、上げたいと思っている子どもの便用の様子の違いを少し説明します。

例えば、これらの生徒が夏休みの課題に取り組むとします。

仮に全20ページある数学のサマーテキストを一冊解き終えるという課題が、学校から出ていたとします。


[成績を上げたいと思っていない生徒の場合]

1.問題を解きます。20ページやり終えます。

2.全部まとめて、丸付けをします。

(終了)


[成績を上げたいと思っていない生徒の場合]

1.問題を解きます。1題ずつ解きます。

2.1題ずつ丸付けをします。

3.正解できなかった場合は、なぜ間違えたのかを考えます。

4.なぜ間違えたのか考えても分からなかったら、解説を見て理解します。

5.解説を見て理解できなかったら、学校の先生や塾の先生に聞けるように付箋紙を貼ります。

以上を繰り返します。


同じ宿題をするという行為で、要する時間も大差なかったとしても、その成果には大きな違いが生じます。

成績を上げたいと思っていない生徒に、勉強の効率の良いやり方を伝えても定着しません。

逆に、成績を上げたいと思っている生徒は、自分でも工夫して効率化しようとしますから、ちょっと伝えただけで一を聞いたら十を知ってくれます。


当教室では、成績が上がっている生徒が多いことを自慢しています。

愛知全県模試の成績表をネットで公開して自慢したいところです。個人情報の塊なので難しいのですが。

どうして多くの生徒の成績が上がるのかというのは、いくつか要因はあるのでしょう。教室では、生徒の成績を上げるために、


・生徒一人ひとりにあった指導プランを考える

・できるだけ分かりやすい教材を採用する

・優秀な講師を揃える

・指導の失敗を起こさないために、指導の段取りを守ることを徹底する


など、できる限りの方策をとってはいます。

けれども、これらの方策以上に大切なことは、生徒自身に「成績を上げたいと思ってもらう」ことなのですよね。


じゃあ、どうやって生徒にそう思ってもらうのかって話になるわけですが、これはまた長くなるのでまた別の記事に譲ります。

ただ、怠人、勉強しない生徒がなぜ成績を上げようと思っていないかというと、成績を上げようと思う理由がないからなんですよね。逆に、勉強したくないと思う理由はたくさんあります。


怠人の持つ成績を上げようと思わない理由、勉強したくないと思う理由

・疲れる、たるい

・疲れた

・部活が忙しい

・ゲームがしたい

・youtubeを見たい

・いい成績をとっても、友だちに自慢できるくらいしか良いことがない

・将来のためと言われても実感がないから、ピンとこない


これらの心理は、当たり前のものだと思います。

いい成績をとれれば、友だちに自慢できるってのも怪しくなってきています。一~二世代前は、廊下にテストの成績表が張り出されて、成績下位者は恥をかいて、上位者は鼻高々だったものですが、それもなくなりました。

中高生の周りには、成績を上げようと思わなくなる理由、勉強したくないと思う理由にあふれています。

私たち塾屋や、それ以外の生徒の周辺にいる大人は「成績を上げたい」と生徒に思ってもらう理由を準備してあげなくちゃいけません。

それさえできれば、生徒の成績を上げることはさして難しくないのですよね。









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