2018年3月18日日曜日

これからの大学入試・高校入試

明日は愛知県の公立高校の合格発表です。
自己採点の段階でおよそ合格不合格が予想できている生徒が多いですが、微妙なラインの生徒はとくに不安も大きいでしょう。
年度によって、ボーダーの上下もありますので仕方がありません。

本年度も、高校入試や大学入試はこれで一段落ですが、入試の出題傾向などは年々少しずつ変わってきています。これは、中学や高校での教育のあり方自体の変化と捉えても良いかと思います。

具体的にどのような変化があり、これからどのような変化が予想されるでしょうか。
大学入試もセンター試験から新しい試験に代わる予定です。


英語の入試傾向の変化とこれから

英語は、ほかの教科と較べても全般的に難しくなってきていると思われます。
ゆとり教育の頃も他の教科と比べれば難易度の低下は少なかったですし、脱ゆとりが唱えられるようになってからはより難易度があがりました。
これからの教科書改訂の予定などを見ても、さらに難易度は上がっていく見込みです。

 ポイント1 
英語はどんどん難しくなっていっている

より具体的にいえば、入試問題の長文化がすすみ、語彙や語法の出題が増えています。
逆に減っているのが、複雑な文構造を持つ英文の解釈や、文法的な出題です。

 ポイント2 
英語は長文化が進み、語彙や語法の出題が増えている
複雑な英文解釈や、文法については優先されなくなっている

この傾向は公式にアナウンスされているとおり「実用英語」というキーワードで説明できるでしょう。
ここで言う実用英語というのは、ビジネスや日常生活で使う英語の技能を重視しようということです。「読む・書く・聴く・話す」の4技能を等しく評価しようという方針もその一環といえるでしょう。

日本が、日本語だけの経済圏では優位がとれず、国際社会の中で競争していかなければならない実情を考えると、妥当な方針のように思えます。
ただし、逆にこれまでより評価されにくくなった部分が存在するのも知っておくべきでしょう。
従来の古い受験方式の方が、学術的な理解や論理的な思考力を問うことはできていました。これまでの高校入試や大学入試における英語が、英語技能そのものよりも英語を通じて、受験生が論理的に物事を考え類推する技能を持っているかどうかを問うことができていましたが、最近の英語の入試ではもっと純粋に英語の技能のみを問う形式になってきているように思えます。
どちらが良いというわけではないのですが、ものごとの良い面にはかならず裏面があることは理解しておくべきです。


数学の入試傾向の変化とこれから

数学については、学生全体の低学力化が進んでいることもあり、出題はそれほど難しいものは出されにくくなっているように感じます。
ただし、難問が少なくなっている反面、計算量の多い「情報処理能力」が高いレベルで求められているように感じます。

 ポイント3 
数学は実用性重視になってきている

また、「資料の整理」の単元が高校入試や大学入試で出題が年々増え、今後の教科書改訂でもだいぶ補強される予定のようです。

資料の単元というのは、日常レベルの情報処理を数学に落とし込んだような内容で、もっとはっきり言ってしまえば、「こんなの数学というよりも、算数じゃん」というような内容です。
理解力の高い生徒にとっては、どうしてわざわざ単元を作ってまで勉強をする必要があるのか理解できないところでしょう。実際に生徒を指導していると、こうした単元に意外と苦労する生徒も多いのですけれども。

数学のこうした変化についても、英語が実用英語を重視されてきているのと同様に、子どもたちが実社会に出た時に役に立つ技能を身に着けさせようという意図が感じられます。
資料を分析して、類推し、そこから情報を引き出すという技能は、日本の会社社会で働いていく上で最低限必要なものとなるでしょう。

こうした変化の中で、切り捨てられてきているものはどこでしょうか。
例えば、数学では行列などは切り捨てられたままです。
難解な問題を解くための発想力や、学者や研究者を目指すための基礎技能といったものは二の次にされているように思えます。


全体的な入試傾向の変化とこれから

暗記系科目と言われている社会科科目でも、単純な知識よりも情報処理能力を重視する形になっているように思えます。
総じて、大学を卒業後、就業し働いていく上でより実用性が高い技能を身に着けさせようという基本的なコンセプトがあるようです。

これは、大学進学率の増加という社会構造の変化があると思われます。
私たちが大学受験をしたときの大学進学率は、20%から30%へ推移していた時期で、それ以前はもっとずっと低かったそうです。
そして今は、ずいぶん前に50%くらいまでに大学進学率が上がり、今は横ばいで安定しています

この変化を減ることで、以前は高卒で事務職など少なくなかったところが、現在では高卒での就業は工場での単純労働や、介護や物販の現場などといった単純労働が大半となり、事務職や専門職は大卒以上の学歴の者に専有される形になりました。

つまり、以前は大学というのは、研究職や高度な技能が求められる専門職、特別な立場を目指す者たちだけが進学する場所だったのが、
今では、後に普通の会社員になって事務や営業で働くであろう人たちが進む場所に変わっているのです。
つまり、日本の会社社会のなかで働いていく上で必要な勉強をさせるように変わってきて言うのだと思われます。

もう一つ、大きく変わっていることがあります。
それは、多様性の重視です。

以前の高校入試や大学入試は、一元的にしか受験生の能力を評価することができなかったという批判があり、より多様で、いろいろな種類の才能を拾い上げことができる形に入試制度が変化しようとしています。

たとえば、私たちの世代と比べると、推薦入試AO入試などの枠は圧倒的に増えています。
また、今回の大学入試改革の初期案では、もっと多様なタイプの入試制度が導入されるはずでした。結局のところは、だいぶ腰砕けになってしまい、センター試験をちょっと変えた程度のささいな修正になりそうではありますが。

 ポイント4 
入試制度は多様性のある才能を拾い上げる形に変化しようとし続けている

ただし、この多様性の重視というのは、大きな落とし穴があることを理解しておくべきでしょう。
受験というのは、一元的に評価するからこそ、競争が起こりやすいのです。
そして競争が学力の向上を生み出します。
裏道の存在は、生徒たちの競争心を失わせ、ひいては全体的な能力の低下に繋がります。

たとえば、推薦入試やAO入試の増加はすでに大学生の平均学力の低下を招いています。
そして、さらに大学入試の多様化が進むことを考えると、さらなる低学力化を招く可能性は高いでしょう。

 ポイント5 
低学力化は止まらない

競争の有無が、学力を大きく左右するのは間違いありません。
たとえば、愛知県の小学生の平均学力は、他の都道府県との比較したランキングでは常に最下位の沖縄県ほどではないにしろ、かなり下の方が定位置ですが、
愛知県の中学生の平均学力は毎年だいぶ上位の方に位置しています。
これは、愛知県は公立校志向が強く、中学受験の競争がゆるい県であり、逆に中高一環で進学する生徒が少ないせいや、全国でも珍しい2校受験ができる公立入試制度のせいで競争が起こりやすくなっているからでしょう。

また、低学力化が止まらない原因の1つには、これはとても良いことなのですが、日本の社会が以前よりもきちんと弱者救済ができるようになっているからというのもあるでしょう。
日本は先進国の中でも学歴による収入の格差は少なく、国民層中流意識と言われています。そうすると、どうしても競争が起こりにくくなってしまうのは仕方がないことでしょう。


さて。
つらつらと、現状の分析やこれからの予測を述べてきましたが、学習塾としては受験や教育の仕組みがどう変わろうと、その変化に合わせて、学習指導や受験指導をしていかなくてはなりません。
以上のような予測は私の勝手な推測で、塾屋さんの本分としては推測をもとに動くのではなく、変化が確実なものとして公表されてから、それに合わせて指導を変えていくのが間違いのないところではあるのです。
特に、大学入試制度改革がどうなるのか、だいぶ情報が入るようになってきたとは思うのですが、まだまだ目が離せません。

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