2018年7月13日金曜日

統計から考える公立高校入試対策

当塾では、中3生の公立高校入試対策は夏休みから本格的にスタートします。
中3生の多くが夏休みに入るあたりで部活動を引退するため、同じような日程で受験対策を始める学習塾は多いでしょう。


さて、受験対策を始める上で、どう教えるかというのも大切なのですが、

どこに力を入れて教えるべきか、
どこに力を入れて教えるのが合格に近づくのか

ということも大切になってきます。
統計的な数値を踏まえて、少し説明させてもらいます。


公表されている入試結果を見ると、教科によって平均点が違うことがわかります。

例年の平均点
国語 → 7割程度
社会 → 6割程度
理・数・英 → 5割程度

年度によって差はありますが、だいたいこんな感じでしょう。
本当は平均点だけでなく、高校別の合格ボーダーなど公表してもらえたら進路指導がとても楽になるのですが、残念ながら非公表のようです。

ただし、平均点は同じでも得点の分布の仕方は教科によってまた違うと推測されます。
実際の入試本番の点数の分布は不明ではありますが、入試にそっくりにつくられた模擬試験を生徒に受けてもらった結果から推測になりますが、

分散が特に大きな教科 → 英語
分散が大きな教科 → 理科、社会
分散が小さな教科 → 数学、国語

分散というのは、統計学の用語で数値の散らばり方の度合いの意味しています。
標準偏差とだいたい似たような意味ですので、標準偏差が大きな教科、標準偏差が小さな教科と言い換えた方が分かりやすいと感じる人もいると思います。

より分かりやすく説明するなら、例えば1000人の生徒が受けたテストで、AくんとBくんがそれぞれ、各教科で100位と900位になったとします。すると、

平均点 数学 55点       英語 55点
Aくん 数学 65点/100位  英語 90点/100位
Bくん 数学 45点/900位  生後 20点/900位

というような成績になるわけです。
数学と英語の順位の差は同じでも、点数の差は英語の方が大きくなるわけです。

学校の定期テストではここまではっきりした差はでませんが、入試や入試を真似した模擬試験ではわりとはっきりとこのような差が出ます。

これはどういうことかというと、

分散が特に大きな教科 → 英語 ◀点数が学力によって大きく上下する
分散が大きな教科 → 理科、社会 ◀点数が学力によって大きく上下する
分散が小さな教科 → 数学、国語 ◀学力差があっても点数差がつきにくい

ぶっちゃけてしまうと、こういうことです。
また、公立高校入試は、どの教科も均等配点で各教科22点満点です。
一部の私立高校入試や、大学入試のように教科によって配点が変わるということはありません。
つまり、高校入試の得点力だけを求めるならば、「英語」「理科」「社会」に力を入れて勉強をさせた方は合計点は向上させやすいということになります。

ちなみに、どうして数学や国語の分散が小さくなっているのでしょうか。

国語については予備知識がない人でも想像がつくのではないでしょうか。
国語というのは要するに日本語で、とりたてて特別に受験勉強をしなくても、当たり前の日常生活を送るなかで学ぶことができるため、勉強熱心な子とそうでない子の間で差が大きくなりにくいということで良いと思われます。

数学については、愛知県の入試問題の出題傾向を知らなければ想像がつきにくいのですが、逆に理解しているのであれば当たり前でもあります。
愛知県に限らずなのですが、数学はほとんど全員が正解してくるような正負の足し算や引き算のような簡単な計算問題から、高校生や大学生が挑戦しても難しいような難解な図形問題までが均等に出題されます。つまり、問題ごとによる難易度の差が大きいのです。
さらにはこれは愛知県の固有の事情なのですが、他の都道府県では易しい問題は配点が低く、難しい問題では配点が高くなるところを、ほぼ全問1点(一部2点)の配点で、配点の差がほとんどないのです。
つまり、

1.愛知県の数学は、問題ごとによる難易度の差が大きい
2.配点が1問1点で均等
→ 易しい問題だけでも確実にとっておけば、それなりの点数がとれてしまう。
→ 一生懸命勉強しても、難問で正解するのは困難で満点近くを取るのは難しい

ということなのです。

以上のような都合を踏まえると、必ずしも分散が一番大きな英語に力を入れて指導するのが最適かというと、それも微妙です。

実のところ、たいてい学習塾はどの塾も「英語」や「数学」はふつうもっとも力を入れて指導をします。

数学や英語がもっとも難しく生徒がつまずきやすいため
数学や英語が高校入学後の勉強や後の大学入試のキーになりやすいため

といった理由があります。
ですが、それだけ力を入れて指導しても、成績下位層の英語の得点はかなり低くなるのが普通で、まともに得点が取れません。

というのも、英語の入試問題の出題のたいはんが長文による出題で、ちゃんと卒業レベルの英語力を持っていないと、まとに解くことのできる問題がほとんどないからです。
反面、数学は易しい計算問題も多く、1~2年生までの内容しか理解できていない生徒にも点数を取れる問題はありますし、理科や社会は単元ごとの勉強ができていれば得点しやすい部分もあります。
英語は積み重ねの大きな教科で、一度つまずいてしまうともっとも取り返しがつきにくい教科なのです。
数学も同様に積み重ねが重要な教科ではありますが、易しい計算問題なども出題される都合上、十分な理解がなくても得点できてしまうのですね。

つまり、

英語は成績が中位程度の生徒にとっては、もっとも得点を伸ばしやすい教科
英語は成績が下位の生徒にとっては、切り捨ててしまうしかない教科

なのです。

ほかの教科についても、

数学は計算問題ができていないような生徒にとっては、点数を伸ばしやすい教科
数学は計算問題がきちんとできているようであれば、それ以上は点数を伸ばしにくい教科

理科や社会や誰にとっても成績を伸ばしやすい教科

国語は生徒の調子の良し悪しで上下しやすいので、あてにするのが怖い教科

というような特徴があるように思えます。

だったら、英語以外の点数の伸ばしやすい理科や社会に力を入れて勉強させるべきかというと、これも判断に迷うところでもあります。

当塾や学習塾の大きな目標の一つが高校入試の合格ではありますが、生徒にとって高校入試は人生の途中経過でしかありません。

先述した通り、英語と数学は大学入試でもっとも重視されやすい科目でもあります。
そうすると、理科や社会の点数のとりやすいところばかりで点数をあげて高校に入っても、高校に入ってからが続かなくなります。

また、高校に入学した以降、理系での大学進学を目指したいのか、あるいは文系で大学進学を目指したいのか、そのあたりの志望の違いによって力の入れどころは変わってくるでしょう。
高校卒業後は就職を考えているような生徒はまた大学進学まで希望している生徒とも事情は変わってくるでしょう。

当塾の受験対策講座では、特に大学を進学まで希望するような生徒には数学と英語は力を入れて勉強するように指導しています。
逆に、高校進学後は就職を希望するような生徒は、進学する高校が最終学歴になることを踏まえて、生徒の学習状況に合わせてもっとも点数を伸ばしやすそうな教科に力を入れるように指示を出します。

このあたりは生徒ひとり一人を見て対応していくべきところですし、生徒自身に「自分がどう勉強したら成績が上がるのか」と考えるように促すことはより大切なのでしょう。


今日はちょっと小難しい記事を書いてしまいましたが、生徒はともかく指導する側は知っておくべき内容だと考えています。

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