2022年4月25日月曜日

小論文

 大学受験では,受験する大学や利用する受験方式によって「小論文」が受験に必要とされる場合があります。


塾で指導している生徒がとても素晴らしい答案を作ってくれましたので、本人の許可を得て転載させてもらおうと思います。

課題となるのは慶応大学の入試過去問で,「多文化共生社会」について書かれた文章について大問1で内容の要約を行い、大問2で受験者の意見を述べるという問題でした。

アメリカ同時多発テロから少し後くらいに書かれた課題文で、多文化共生社会が後退し、異文化に対して欧米が排他的な動きを強めていた社会背景のあったころの少し古めの過去問です。

大問1の解答については省略し、大問2の生徒の解答を記します。


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生徒解答

 この世で最も合理的な集団はアリの社会である。アリ社会は1匹の女王アリを中心ちし、明確な身分区分のもとそれぞれ課せられた役割をそれぞれのアリが忠実に果たすことで完璧な階層社会として成り立っている。では私たち人類もこの完璧な集団を参考にすべきか。否である。なぜなら人類はアリとは違い多様性があるからだ。これからの集団に求められるのはアリ社会のようにすべてが統合された集団ではなく、多様な人たちが共存する集団だと私は考える。しかし私たちは多様な人たちとの共存を訴えつつも「私達ではない人たち」を受け入れられず攻撃の対象としてしまう。こうした「ねじれ」を解決するのが「よそよそしい共存」で「群島」といったイメージであり、「私達」と「私達ではない人」とが互いに強く干渉することはなくとも、そこにはたしかに一つの集団が生まれるのである。

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「よそよそしい共存」や「群島」については、課題文で概念が定義されています。

この生徒の解答が面白いところは、課題文ではまったく触れられていない「アリ社会」と人間社会の比較を解答の中心に置きながらも、課題文のテーマから外れることなく自分の意見を適切に述べることに成功しているところでしょう。採点者の好みの分かれる解答でしょうが、少なくとも合格点はもらえるでしょう。


小論文試験を攻略するには、


1.課題文や課題となる資料を適切に読み解く読解力

2.与えられた課題について考える思考力

3.自分の考えを分かりやすく文章にする表現力


以上のような重要な能力が問われます。1や3については、学校や塾で指導することで比較的短期間に改善することが可能です。しかし、2の思考力については「普段から物事を深く考える習慣をつけること」が何より大切になるでしょう。

また小論文試験というのは、試験の平等性や再現性という点ではいまいちなのでしょうが、詰め込み型の暗記教育対応型の試験では測れないより重要な生徒の能力を測ることのできる試験です。もっと多くの大学の入試で採用されても良いんじゃないかと思います。



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