2023年2月22日水曜日

大学学部の選び方 ①学部紹介

大学受験は私立の前期試験が終了し、週末が公立高校の前期試験です。

高校受験は昨日、公立高校の一般入試でした。

中高3年生が受験を終えつつありますが、2年生の子たちが具体的に受験校を考えていく時期になってきます。

大学選びのための記事を上げてみたいと思います。

今日は第1回として、大学の学部の紹介からです。

なるべく分かりやすくまとめた学部一覧です。

まず理系、理学部からです。

「理学部」

・数学科

・物理学科

・化学科

・生物科

・宇宙物理科

などの学科からなります。

受験には、「数学・英語・理科(コースにより物理・化学・生物)」が最重要です。

宇宙物理科などは学習内容的には地学に分類されるのですが、受験には地学ではなく物理が必要なことが多くなっています。


理学部は理系学部のなかでも、もっとも純粋に学問それ自体を追求する学部です。

工学、医学薬学、社会学とあらゆる学問が理学が作り上げた基盤の上に成り立っているといっても過言ではありません。

例えば、「できるだけ大きな素数を見つけよう!」とかは数学科、「世界のすべてを予測する物理法則を見出そう」というのは物理科、「未知の新物質Z合金を作り出そう」は化学科、「宇宙の果てを調べよう」というのは宇宙物理科の仕事になります。

卒業後の進路としては、他の工学部や農学部と同様に、大学院の修士課程までを卒業し、その上で技術者として就職するというのが一番の定番です。博士課程までを終了すると、大学に残ってのガチの研究者という道もありますが、さすがに人数的には少なくなります。

工学部と比べれば大医学院進学率は若干低く、学部卒で教師や一般の職を選ぶ人もいます。


「工学部」

・物理工学系 物理学と工学を学ぶ

・機械工学系 機械の設計運用

・電気電子工学系 電子機器の開発

・材料工学系 新素材の開発

・エネルギー工学系 エネルギー変換と利用

・化学生命系 生命工学と環境

・建築系 建築士資格を取る

以上のようなコースがあります。
実のところ、理学部・工学部・農学部の境界は曖昧で、どちらの学部でも扱う学問分野は多くあります。
工学部は特に「ものづくり」に係る学部で、直接的に産業に関わり実利が大きいということで、現在もっとも多くの補助金が使われ、もっとも多くの学生を集める学部です。
「機械工学」「電気電子工学」「材料工学」「エネルギー工学」など,ほとんどのコースで実験や実務の演習が多く、いずれ企業の技術者として働くことを主眼におかれたカリキュラムになっています。
比較的、物理工学科などは理論重視でわりと理学部に近い学部かもしれません。他のコースよりは実務より理論面を重視します。古いイメージですと、工学のトップエリートといえば「物理工学系」でしょう。
建築系の場合は、実験というよりもCADとよばれるパソコンの設計ソフトの使い方を覚える演習などが多くなってきます。

受験には、「数学・英語・理科(コースにより物理・化学)」が最重要です。理科で生物を使うこともありますが、まれでしょう。

卒業後の進路としては、他の理学部や農学部と同様に、大学院の修士課程までを卒業し、その上で技術者として就職するというのが一番の定番です。
技術者として大企業で高給取りになろうと考えるのなら、もっとも無難な選択肢です。

国公立大学ではほとんどのコースの場合,大学院進学率は9割以上と高い割合になっている場合が多く,私立大学では1~5割程度です。
ただし、建築系のコースなどは例外で大学院には進学せずに卒業後は建築士資格を用いて就業するのが基本になります


「農学部」

・生物資源/食糧系のコース

・環境生態系のコース

・バイオテクノロジー系のコース

農学部という名称がださいせいか、大学によっては「生命科学部」などという名前に変更している大学も多くあります。
「理・工・農」はよく似た学部でどれも技術者・研究者を養成するところに力がいれられていますが、農学部は特に「生命」に係る学部だと考えれば良いでしょう。

受験には、「数学・英語・理科(コースにより化学・生物)」が最重要です。理科で生物を使うこともありますが、まれでしょう。卒業後の進路としては、他の理学部や農学部と同様に、大学院の修士課程までを卒業し、その上で技術者として就職するというのが一番の定番です。食品メーカーなどへの就業も多いでしょう。


「文学部・人文学部」

・文学系 国文学・外国文学・哲学・宗教学など

・言語学系(外国語学部) 英語や外国語・国際コミュニケーション

・歴史文化系 歴史・郷土史・地域文化・文化地理学

・心理行動学系(心理学部) 心理学・哲学など


文学部が扱う学問の分野は非常に多岐にわたります。
学問の分類方法の1つに、上の図のように「自然科学」「人文科学」「社会科学」の3つに分類する方法があります。

「自然科学」ヒトの営み以前からある自然について扱う学問(いわゆる理系学問)
「人文科学」ヒトの心の内面から生じる学問
「社会科学」ヒトとヒトとの関係=社会について扱う学問

ということです。
文学部ではこの「人文科学」を全面的に扱います。「外国語学部」や「心理学部」なども文学部の一部のコースだけを扱った学部とみなしても良いかもしれません。
コースについては「文学系」「言語学系」「歴史文化系」「心理行動学系」と分けましたが、お互いに相関はあり区別は明確ではありません。
難関大学の言語学系統では言語学を真面目に勉強するところが多いですが、易しめの大学では英語を使った実践的なコミュニケーションばかりを重視するようなところも多いようです。

受験には、「国語・英語・選択(日本史・世界史・文系数学)」が最重要です。
卒業後にはほとんどの学生は一般の就職を選び、さまざまな業種で会社員として働きます。
一部の学生は司書や学芸員を選ぶ者もいて、文学部ならではの職業というとこちらになるのですが、給与面などで恵まれた職とはいえないでしょう。

人文科学は、実利ということを考えるともっとも遠いところにある学問分野です。
しかし、実利を抜きにしてもっとも学問としてもっとも研究しがいのある学問を扱うのが文系では文学部、理系では理学部になるでしょう。
文学部や理学部は学問というものにたいして、もっとも正面から取り組んでいる学部になります。


「社会科学系学部(経済・経営・商・社会学・地域政策など)」

・経営学 企業や組織運営

・商学 商品やサービス

・経済学 社会経済

・社会学部 社会学全般

・地域政策学 町おこし

実際の世の中の仕組みを取り扱うのが「社会科学」です。

社会科学を扱う主な学部は「経営・商・経済」の3つの学部です。
まず経営学部は、企業や組織運営について理念や手続きなどについて学びます。商学部では実際の商品やサービスについて学びます。
経済学部が国や自治体、会社、家計など社会全体の分析を行います。特に経済学の基本として、ミクロ経済やマクロ経済があり、あらゆる経済学の基本となっています。これはニュートンやガリレオ・ガリレイなど時代に考案された数学的な解析を用いて経済学を体系化しなおしたもので、経済学部は文系学部の中ではもっとも理系よりの学部だと言われています。
理系を諦めて文系に進む生徒、いわゆる文転をした生徒は多くが経済学部を選びます。

社会学部はこれらの社会科学を全体的に扱おうという学部です。
地域政策学部はこの十数年で増えてきた学部ですが、社会学的な知識を利用して「町おこし」に利用しようという学部です。中堅どころの大学に多い学部で、いわゆる難関大学や逆にFランク大学ではあまり見ることがありません。

受験には、「国語・英語・選択(日本史・世界史・文系数学)」が最重要です。
卒業後にはほとんどの学生は一般の就職を選び、さまざまな業種で会社員として働きます。

また、公認会計士や税理士の資格を取るには「経済学部」や「経営学部」など社会学系の学部がやや有利と言われていますが、絶対ではありません。
そもそも税理士は大学卒業が必要ですが、公認会計士は高卒でも受験はできます。非常に難しい試験で、社会学系の学部を卒業すれば取れる資格というわけでもありません。


「法学部」

法学部は経済学部などと同様に社会学系の学部に分類されますが、立ち位置は少し特殊です。

法学部の花形というと、司法試験をへて法曹界(検事・弁護士)として働くというのが昔からの花形ですが、この司法試験がかなりの難関です。司法制度が20年ほど前に改革されて、司法試験の合格率はかなり高くなっていますが、それでもまだまだ難しい資格の代表です。

司法(法曹)資格を得るためには、

1.大学(学士課程4年間)を卒業する

2.法科大学院(3年間)を卒業する

3.司法試験を受験する

4.司法修習(1年間の見習い)

という手順を踏む必要があります。

ただし、この難関の司法試験に挑戦するのは、旧帝以上の難関国公立大学が中心です。難関国公立大学でも、司法試験には挑戦せず学部卒で普通の就職を選ぶ生徒も多くいます。

難関でないそこそこ程度の国公立大学や難関私立ではごくわずかの生徒だけが司法試験に挑戦し、中堅どころの私立大学では法科大学院に進学する生徒はほぼゼロになります。

また法学部は法律を勉強する都合で、「公務員(地方行政職など)試験」への挑戦が比較的有利と言われていて、公務員を目指す生徒も多く集まります。

特に私立大学の法学部では「公務員対策講座(有料だったり無料だったり)」を開催し、本来の本学部の授業よりも熱心に指導してもらえる場合もあります


そのため、卒業後の進路としては、旧帝以上の国公立大学では法曹界を目指す者が多いですが、それ以外の法学部では一般の就職を選ぶか、公務員試験に挑戦する生徒が多くなります。

受験には、「国語・英語・選択(日本史・世界史・文系数学)」が重要になり、他の文系学部と大差はありません。


「その他の注目学部」

・データサイエンス学部

応用数学の一分野である統計学的手法を用いて、データ解析を行う技術者を養成する新しい学部です。2017年に滋賀大学にできたのが初めてで、愛知県には名古屋市立大学に最近新設されました。卒業生がどれだけ活躍できるかはまだまだこれからですが、当面は文科省の後押しもあるので、現時点では知名度のわりにお得感のある学部です。


・総合科学部/総合人間学部

これも比較的新しい、25年くらい前から始まった学部です。

多数の学部を持つ難関気味の総合大学に設置され,複数の学部にまたがる授業を受講し横断的な学習ができるというのが売りの学部です。

京都大学の総合人間学部や、広島大学の総合科学部などがあります。ただし、実際に履修できる授業はその大学の設けている学部に依存しますので、大学によって受けることのできる指導はかなりまちまちになるでしょう。

静岡大学にも近年再編されたグローバル共創科学部の中に総合科学科というコースが設けられていますが、静岡大学は浜松市と静岡市に大きくキャンパスが分断されているため、履修できる授業の組み合わせにも制限が大きいでしょう。


・情報学部/情報科

学部名だけで何をやっているのか分からない学部です。大学の案内をしっかり読みましょう。
工学部系の情報学を扱う学科の場合もあれば、カオス理論のような理学部的な情報論を扱う場合、情報科社会を扱う文系学科の場合、データサイエンス学部がデータサイエンスとして独立する前はデータサイエンスを扱う情報学科もありました。



さて、
次回は、以上を踏まえた学部の選び方、今回挙げていない主要学部について解説します。

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