2013年8月1日木曜日

教え方のテクニック

昨日、アップした中2範囲の式の計算の指導テクニックは、数学の苦手な生徒に対してのものでした。
今日は、成績上位の生徒に対する指導について少し紹介させてもらいます。


生徒にとって、学習は「基礎も応用もどちらも同じくらい大切」であると当塾では考えています。
けれども、同時に塾での指導は「応用よりも基礎をしっかりと伝えることが大切」だと考えています。

というのも、基礎だけしっかりと生徒に指導しておけば、応用題については生徒の実力に応じて適切な課題を与えるだけで、特別な指導はしなくてもきちんと攻略して貰えるからです。
問題別の解法のテクニックなどを教える意義は低いと考えています。小手先のテクニックを教えるよりは、自分で考える機会を与えることの方がずっと大切です。小手先のテクニックを教えなければ、解けないようではそもそも課題のレベル設定を誤っているのだと思います。

今日、紹介するのは「高度な学習をしてもらうための基礎的な考え方」を、生徒に伝えようというものです。




中1の1次関数の問題です。

y = x 上の点Pと、y = -x 上にあり、点Pとx座標の等しい点Rを取ります。
線分PRを一辺として、図のように正方形PQSRを作ります。
ただし、点P,Q,R,Sのx座標はそれそれ正であるとします。
点Qのx座標を10としたときの点Pの座標を求めなさい。

以上のような問題を想定します。

どのような問題集にも、この問題についての解法としては、次のようなものが載っています。

標準的な解法
点Pの座標をP(t,t)とおくと、R(t,-t), Q(3t,t), S(3t,-t) とおける。よって、3t = 10 より t=10/3, P(10/3,10/3)

ただし、この座標をtと文字で置くというのは難しいのですよね。非常に有用なテクニックではあるのですが、このあたりのテクニックを学ぶ前に、生徒には関数を図形的に捉えることを学んでもらいたいのです。


つまり、図形より以上のように、図形を比の割合で考えるわけです。こうして比で図形を捉えることで、点Qのy座標はx座標の3分の1であることがすぐに理解できるわけです。
それができれば、わざわざ座標を文字で置かなくても感覚的に答えを導くことができてしまいます。
むしろ、図形的にとらえる発想のあとに、座標を変数tを用いて表すという発想が来るのです。
変数tを用いた解法だけ先に説明してしまっては、体裁を整えるだけになってしまいますね。

あるいは、中2範囲の一次関数などでは図形的に関数を捉えることが重要になってきます。(だからこそ、1年のうちからこの様な関数を図形として捉える思考法を身につけてもらうのですが)

たとえば、「y = 4/3 x + 8」 というような一次関数のx切片(y切片ではなく)を求める場合、y = 0 を代入して計算するよりも、変化の割合を利用して図形的に求める方がずっと手っ取り早いですよね。
このあたりのことは、かっつり問題をやりこめば誰でもできるようになるというものではないのですよね。これを自分で気付くことができるのは、ごく一部の生徒だけです。それをちょっと塾で手助けしてあげるだけで、多くの生徒が同様の思考法を身につけることができるのです。

以上のような問題を通して、生徒には関数を図形的に捉えることを自然に学んでもらいます。
当塾では、このあたりの問題も豊富な新中学問題集などを成績上位の生徒には利用してもらっています。
成績上位を狙う生徒には、できるだけ早い段階、できたら中1のうちにこうした思考法を身につけてもらいます。
(なので、中2や中3になって入塾してもらうより、本当は中1のうちから塾に入って欲しいのです。)

中学生にとって、関数というのは文字式や図形の問題と比べて、非常に概念が分かりづらいものです。関数とは何かという定義を正確に述べられる学生はそう多くはないでしょう。
年輩の学校や塾の先生ならば、「関数を関数と書くから難しいのだ!函数と書けば分かりやすいののだ!」と主張されるかもしれません。

しかし、私は関数の定義を生徒に正確に理解してもらうことが必要だと思いません。
必要なのは、「生徒に関数を感覚的に扱えるようになってもらうこと」なのです。
そのために「関数を図形的に捉えてもらう」習慣をつけてもらうわけです。
関数を図形的に捉えることができれば、高校になって微分積分といった基礎解析を勉強したり、あるいはそれを利用したマクロやミクロの経済学などもごく平易に理解できること請け合いです。中高の物理における力学などについても、ずっと理解しやすくなるでしょう。
関数を感覚的、図形的に捉えることができるというのは、それほど劇的かつ必要性の高い技能なのです。

今日、紹介させてもらったような問題は実のところ、定期テストなど中学校の勉強ではそれほど重視する必要のない部分です。ほとんど出題されることはないですし、出題されたとしても大きな配点にはならないでしょう。目先の点数を求めるだけなら、必要のない技能です。
しかし、トップクラスを目指す生徒にはできるだけ早い段階で身につけて欲しい技能であると考えています。

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