私が学生時代に、おじいちゃん先生が「関数は昔は函数と書いていたんだよ」という話をしてくれたことがあります。
数学をきちんと勉強していくと、「関数」よりも「函数」の方が「カン数」の本質をより正確に表していることが理解できます。
文字通りに意味を捉えるのなら、
関数:関係している数
函数:函(はこ)の中に入れる数
を表します。
数字を入れると、別の数にして返す機能を持つ函(はこ)という意味です。
英語でも関数はファンクション(機能)と呼びます。
ただ私たちのような小学生や中学生を中心とした教育の現場で、「函数」という言葉を使うべきかというと微妙です。
「函数」の方が本質を捉えた言葉ではありますが、「関数」の方が子供が理解しやすい言葉だからです。
私たち教育者は教育の現場において数々の方便(うそ)を用います。
小学生に比例・反比例を教えるときに、
「比例はxが増えたときには、yが増える関係なんだよ」
と小学生に教えます。
実はこれは正確ではなく、比例定数がマイナスであるときはxが増えたときにはyが減少してしまいます。
ですので、教科書の用語では記述を正確にするために「比例はxが増えたときには、yが増える関係」とは書かず、「xが2倍、3倍になるとき、yも2倍、3倍になる」という書かれ方がされています。しかし、生徒に理解を促すためには「比例はxが増えたときには、yが増える関係」と説明した方が理解してもらいやすいのです。
正確な理解については、中学校になって負の数の概念を導入してから誤解を正すので十分です。
数学以外でも多くの方便があります。
例えば、英語では、
小中学生には「英文には、肯定文と疑問文と否定文の3種類がある」と教えます。
実はこれも正確ではなくて高校英語になった段階で「英文には、平叙文と疑問文があり、平叙文と疑問文のそれぞれに肯定文と否定文がある」とより正確な説明をするようになります。
理科でも中学生や高校生には「質量やエネルギーはそれぞれ保存される」と教えます。
原子レベルの反応では、「質量とエネルギーは等価であり、質量とエネルギーを総括した上で保存則が成り立つ」とは教えません。
「物質には気体・液体・個体の3態がある」と教えて、は「物質には気体・液体・個体の他に、プラズマやコロイドなど様々な相がある」とは教えません。
正しいことに固執して、正確な記述を求めすぎると、とても分かりにくくなってしまいます。
生徒に本質的な理解を促すということは、正しく説明することでは決してないのです。
諺に曰く、「嘘も方便」ということなのです。
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