2022年1月24日月曜日

愛知県公立高校入試・複合選抜の功罪

愛知県の公立高校入試は、全国で唯一残された複合選抜(2校を受験できる制度)です。


生徒に「愛知県の子だけ2校受験できるのだよ」と説明すると、彼らは「愛知県で良かった」と益体なく喜んでくれます。複合選抜はとても良い制度なのですが、生徒にとっては実は歓迎できることばかりではありません。


結論を述べると、複合選抜の場合は受験の競争が激しくなります

受験校が2校選べることで、1校は挑戦校で、もう1校は固く受験しようということになります。これが受験校が1校の場合は、大概の生徒が安全策に流れますので、愛知県以外の都道府県の公立高校入試はほぼ全員が第一志望合格の出来試合になります。

愛知県の入試でさえ、合格率が高い受験ですが、他都道府県はもっとです。


競争率が高くなることは悪いことではありません。

全国学力テストによる調査では、愛知県の小学6年生は全国でも最低レベルの学力であるとされていますが、中学3年生ではかなり上位に位置しています。

(2019年:小学生47位 中学生9位)


特に、ゆとり教育の時代には、一元的な競争が悪であるという風潮が作られました。

子供の多様性を認めようというとで、定期テストの順位が張り出されないようになり、ほとんどの都道府県で複合選抜のような競争を助長する受験制度は取りやめになりました。

(最盛期には、全国の半分ほどの都道府県で複合選抜が採用されていました)


実際、社会に出たときに必要とされる能力や技能は多様にわたり、人間をたった1つの基準で判断するというのは好ましくないことなのでしょう。

しかしながら、子供たちを1列に並べて同じ基準で評価し、競争を煽ることによって、子供たちが努力できるようになるというのも間違いのないところでしょう。

日本全体で子供たちの学力が低下している要因の1つは、間違いなく競争の否定があるでしょう。

子供たちは、学年を重ね、進路を選んでいくにつれて、それぞれ多様な道に進んでいきます。しかし、基礎教育になる小学校から高校までの期間はもっと一元的な基準で評価するというのが好ましいのではないでしょうか。


その点において、愛知県の公立高校入試は他の都道府県のものより優れたものであるでしょう。

特に次の2023年度の入試より、受験の制度が少し改定され、事実上これまでよりも「学力重視」で生徒たちに競争をさせる仕組みに変わります。

またその一方で、大多数を評価し、特別な技能を持った生徒にも配慮して、「特色選抜」という多様性の評価を考えた制度も創設しています。

学力の高いそうはより学力重視で競争させ、そうでない学校については人間性重視の評価や特色選抜も認めるというダブルスタンダードです。

この制度改革によって、愛知県の生徒の学力が相対的にさらに伸びるのではないかと期待されます。

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