2013年11月11日月曜日

成績上位の高校ボーダー

せんだって、成績下位のせいとの進路指導についての記事をかんたんに書きましたが、成績上位の生徒の進路について説明します。

個別指導塾ですので、成績が下位の生徒と同じくらい成績上位の生徒もいます。
当然、個別塾での進路指導にはこのあたりの情報も必要です。


横浜で指導していたときなどは、成績上位の生徒には私立高校が人気でした。
私立高校、というより、中高一貫の私立校です。

横浜のような都会では、公立の学校が学級崩壊していることが多く、私立に人気が集まっていました。
そのため、学力的問題もしくは経済的な問題がない家庭の生徒はできるだけ中高一貫の私立校を選ぶのが一般的です。

中高一貫校というのは、高校受験が必要がないので、

・ ゆとりのある学生生活を送れる
・ 中高一貫で体系的な勉強ができる

以上の2点が主な理由で、人気があります。
ただし、上のゆとりのある学生生活はともかく、下の体系的な勉強というのは有名無実といっていいでしょう。
横浜でもここ愛知でも同じなのですが、私立高校の勉強については、多くの学校で以下のような状況になっています。

・ 英語、数学は高校内容を先取りしてやりすぎて、ついていけない生徒が続出
・ そのため、同じ内容を何度も戻って学習することが多い
・ 高校受験がないため、受験勉強をしないので、生徒の学力が大幅に下がる
・ 学校OBの世間知らずの教師が多い
・ そのため独自性の強すぎるその教師オリジナルの失敗授業が多い
・ 理社の指導は公立とほぼ同じことが多い

もちろん、一貫校にはメリットも多いのですが、学力の高い生徒を一貫校に送ることはデメリットが大きいように感じます。
毎年行われている、文部科学省の全国学力テストのランキングなどでも神奈川県が毎年下位に入っているのはこのあたりの構造が遠因にあるのではないでしょうか。
(愛知県は比較的上位ですね)


それに対して、愛知県の場合は全国でもっとも公立志向の強い都道府県です。
高校受験でも大学受験でも、ほとんどの場合は公立志向です。
分かりやすい例を挙げると、

「名古屋大学(地元公立トップ校)」と「早稲田大学(全国区私立トップ校)」のどちらに行きたい?

という質問に、99%の生徒や保護者は「名古屋大学」と答えます。
経済的にかなりゆとりのある家庭の場合でもです。
またほとんどの生徒や保護者が、名古屋大学のほうが難関の大学だと思い込んでいます。

「愛知教育大学(地元公立下位校)」と「早稲田大学(全国区私立トップ校)」のどちらに行きたい?

という質問でも、90%は「愛知教育大学」と答えるでしょう。

以上は大学受験の例ですが、高校受験でも圧倒的に公立高校が人気です。
愛知県民は中流志向が強く、長いものに巻かれようとすると言われますが、そうした側面のあらわれかもしれません。

そのため、西尾市でも成績上位の生徒は公立高校を受験します。
もっとも人気であるのが、

西尾高校(普通科)
一般入試合格者平均内申40.6
60%合格ボーダー39
受験目安 内申37以上

ほかにほとんど選択肢がありません。
より上位の学校に進みたいという生徒も多少います。

刈谷高校(普通科)
一般入試合格者平均内申43.1
60%合格ボーダー45
受験目安 内申42以上

岡崎高校(普通科)
一般入試合格者平均内申42.4
60%合格ボーダー44
受験目安 内申42以上

ただし、少し遠くなってしまいますので、刈谷高校や岡崎高校を目指す生徒は少ないでしょう。刈谷や岡崎に合格できる実力のある生徒でも、通学の便を考えて西尾高校を目指すのが普通です。

いずれの学校も、合格ボーダーがかなり高くなります。
岡崎や刈谷高校の場合、合格者平均内申よりも、60%合格ボーダーが上になります。

このあたりの上位校に合格するためには、内申点をしっかりとることと、テストの点数を取ることの両方が求められます。かなり厳しい勝負になります。
60%合格ボーダーの他に、受験目安を併記しましたが、これを下回ると合格率が10%とか5%というレベルになってしまいます。これを上回れば、合格率が40%や50%に近くなります。
また、だいたいこれくらいの成績を取っていないと、そもそも中学校の先生から受験の許可が下りません。
つまり、上位校を受けるにはまず最低限の内申点を取ることが必須であり、
そしてそこから先は、内申点の差よりも筆記試験の結果次第で逆転も多いにありということです。
内申点と筆記試験の得点力の両方が求められるわけですね。

愛知県の公立高校の合否は、2段階で行われます。
例えば、定員360人の学校の場合は、

1.受験者の中で、内申点と筆記試験のどちらも360位以内に入っているものが合格
2.残りの者の中で、内申点と筆記試験の合計点が高い者から順に合格

という手順です。
塾内向けの資料から、図説を転載します。


合格する生徒の範囲が非常にいびつで、線形的でなく、非合理的ですね。
ただし、この入試制度にもメリットがあって、一定の内申点を取ると受験に有利になるため、「志望校の選定」が行いやすいということがあります。
この仕組みで合否判定が行われるため、「確実に合格できると思っていたのに、逆転不合格」という事例はかなり少数に抑えられます。逆に逆転合格は多少難しくなるのですけれども。

刈谷高校と岡崎高校を比較した場合、刈谷高校の方が多少難関にはなるのですが、統計的に見て、第一段階での「内申360位ライン」については、ほとんど同じかむしろ岡崎高校の方が上になっている年度が多いようです。しかし、「筆記テスト360位ライン」や、第2段階の合計点での合格ラインは刈谷高校の方がだいぶ上です。

これは刈谷高校や岡崎高校に限ったことでは無く、刈谷市や知立市近辺の学校と、岡崎市や西尾市近辺の学校を比較した場合はほとんど例外なく同じことがいえます。

これはどういうことかというと、志願者数と倍率の違いに起因します。
佐鳴予備校など大手の学習塾の難易度ランキングでは岡崎高校の方が上位にランキングされています。(おそらく、統計情報が古いため)
そうした情報は、受験校を決定する中学校の先生も知っていますので、だいたいそのレベルに合わせた生徒しか高校を受験しません。
どの学校も、だいたい大手予備校のランキングなどで公表されている前評判通りの成績の生徒が受験します。そのため、志願者数や倍率が変化しても内申での合格ラインは少ししか上下しません。
それに対して、筆記試験での合格ラインは志願者数や倍率によって大きく上下してしまうというわけです。
つまり、刈谷市や知立市付近の学校は地域の生徒数の増加や、交通の便の変化によって、全体的に受験者数が増え、ボーダーが上がっている傾向にあり、岡崎市や西尾市の多くの学校ではその逆のことが起こっているわけです。
もちろんこれは凡その傾向で、年度によって変動はありますし、定員枠の変更など様々な事情でボーダーは揺れ動いてしまうのですが。

このあたりの込み入った事情までは生徒や保護者に理解してもらう必要は決してないのですが、進路指導をする側としては知っておいてもよいのでしょうか。

受験生や保護者に知っておいてもらわなくてはいけないのは、
上位校の高校受験は、

不合格者も多く出る

ということです。中堅校や下位校の場合は、多くの場合、内申点によゆうももって受験をすることも多いので、実のところ不合格者はとても少ないです。
ですので、かならずすべり止めとなる併願校は必要になります。

こうした上位校には、推薦入試もあります。
西尾高校、刈谷高校、岡崎高校などは、毎年定員の10%強にあたる45人前後の生徒が推薦で入学しています。(県の出しているガイドラインでは、本来10%以下におさえることになっているのですが)

西尾高校
推薦合格者内申平均 40.7

刈谷高校
推薦合格者内申平均 43.2

岡崎高校
推薦合格者内申平均 43.6

合格者の平均内申点です。どこもレベルが高いですね。
さらに上位校の場合、推薦入試であっても、不合格者は多くでます。これらの上位校の場合、例年推薦入試の合格率は50%前後です。
下位校の場合、推薦入試で定員割れをする場合もありますが、中堅校や上位校の場合はしっかり不合格者ができます。
また、この合格者の平均内申点はほぼ受験者の平均内申点と等しいです。
つまり、同じくらいの成績の生徒がたくさん不合格になっているわけです。
また、内申点別の合格率を調査してみると、内申点45の子も、40前後の生徒もほとんど変わらないことが分かります。推薦入試の場合、最終的な合否の判定は内申点では行われていないことが分かります。おそらく、生徒会活動や部活動の実績、面接での印象などが合否判断の大きなウエイトを閉めていると思われます。
ただし、少なくとも合格者平均に近いくらいの成績はとっておかないと、そもそも中学校からの推薦が得られず、推薦入試で受験することはできません。
つまり、上位校の推薦入試で特に有利に受験できる生徒というのは、「内申点のわりに筆記試験の自信が無く、生徒会活動などの実績がある」生徒ということになるでしょう。

また注意しておきたい点としては、推薦入試は基本的に地元の生徒を対象にしていることです。
市外ややや遠隔地にある中学校からは、特に事情がない場合は推薦入試で受験することはできません。例えば、当教室の付近の生徒は西尾高校の推薦は貰えても、刈谷高校や岡崎高校の推薦は貰いにくいのです。

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