2013年11月7日木曜日

塾の理念

いつもは午後3時までには開校なのですが、事前に生徒には周知してあったとおり、今日は開校が少し遅れました。

学書の教材展示会およびセミナーにいってまいりました。
学書は代理店もやっているので、他社の教材も多く見ることができるのが強み。なのですが、今回は会場が狭くて他社教材は少なめでした。見たかったテキストがほとんど見れませんでしたね。
学書が作っているテキストは正直、イマイチなものばかりですし。

しかし、本当のお目当てはセミナーの方です。
学書のセミナーはかなりレベルが高いです。
愛知県内で、一度は聞きに行った方がいいと勧められる塾人向けの無料セミナーは、

フォレスタ勉強会(SPRIX・森塾主催)

以上の2つだけです。
教育開発出版だとか、学悠出版の主催のセミナーはたるいですね。
レジュメだけくれ。そしたら帰るから。と言いたくなります。
(教育開発出版も、学悠出版も教材会社としては非常に優秀で、良いテキストを供給してくれるのですが)

中土井鉄信氏は塾のコンサルタント業をされている方で、非常に話が巧く、魅力的な方です。
一言でいうと、口八丁手八丁の詐欺師(褒め言葉ですよ)のような方です。
このような方の行う授業はきっと面白いでしょうね。
塾の経営に関しても、しっかりした理念を持っておられます。

ただし、この中土井氏の塾経営理念は、フォレスタを用いた森塾の理念とはある意味まったくの真逆です。基本的には両立はしません。
どちらが優れた考えなのかは、場合によりけりなのでしょうが、塾を経営する人間はやはりどちらの考えも知っておくべきでしょう。

森塾のセミナーでは言っていました。
「出来ることには限りがある。重要でないところに、無駄な労力はかけてはいけない」

中土井氏も言いました。
「保護者とはコミュニケーションを取るべきだ。だが、保護者の要求をすべて受け入れてはいけない。出来ないことは出来ないといって、きちんと塾をやらなくてはいけない」

大切なのはきちんと理念を持って経営をすることだと思います。
それさえ守ることができれば、生徒や保護者、ひいては地域全体の信頼を勝ち取り、安定した経営を行うことができるのでしょう。森塾のやり方を踏襲するのも、中土井氏のやり方を踏襲するにしてもいずれも同じことだと思います。

さて、セミナーの内容をすべてレポートするつもりはないのですが、
中土井氏と森塾の塾経営に対する理念の違いの顕著なところだけまとめてみましょう。


● 塾の仕事は何ですか?

中土井氏 …… コミュニケーション

森塾 …… 生徒の成績を上げる

森塾の考え方は分かりやすいですね。生徒の成績さえあげていれば、生徒も辞めないし、評判が高まって生徒が集まるという考え方です。

対して、中土井氏は「保護者や生徒」とコミュニケーションを取ることだと述べています。
そして、コミュニケーションとは生徒や保護者の「セルフエスティーム(自己重要感)」を高めることだと言います。セルフエスティームという概念は難しいですが、要するに「自分が他人から関心を払って貰っている、塾が本気で考えてくれている」と感じてもらうようにすることです。
すこし意地悪に要約すれば保護者も生徒も「うまくおだてて、その気にさせる」ということですね。まさに詐欺師的ではありますが、生徒と信頼関係を築くことが生徒の成績を上げることの第一歩ではあります。信頼関係がないと、授業をちゃんと受けてくれませんし、宿題もやってきてくれないですからね。

● 塾の生徒集めの要は

中土井氏 …… 口コミ(生徒と保護者、とくに保護者)

森塾 …… 口コミ(生徒)

集客の一番重要なポイントは口コミだという考えは両者とも共通しています。
チラシなどは補助的なものに過ぎず、塾の内部がしっかりしていて地域の評判が無ければ、入塾には繋がらないと考えます。
特徴的なのは中土井氏が保護者を主なターゲットとして、森塾が保護者を完全に無視しているところです。

中土井氏は退塾を防ぐために、毎月一回は各家庭の電話がけをしろと言います。(中土井氏はDTS(デイリーテレホンサービス)という用語を用います)
対して、森塾は一切行いません。そんなことは無駄な労力で、「生徒の成績を上げること」に注力すべきだといいます。そういったことをする塾を馬鹿にするというか、コケにしていますね。

ちなみに、当塾の場合はまったくしないわけではありませんが、必要最低限です。
模擬試験の結果の報告や、進路指導上で必要なことがあれば電話がけもします。基本的に生徒だけでなく多くの保護者が受験の仕組みや、進路情報を知りません。受験や進路選択は生徒だけではなく、ご家庭全体で考えて貰う必要なことですので、最低限の情報は伝えていくべきだと考えています。
かといって、中土井氏の言われるような保護者と仲良くなるためだけの電話がけなんていうのはめんどくさくてやってられませんね。

中土井氏はイベントも重視します。
たとえば、

「小学生対象無料企画、理科実験教室・アイスクリームを作ろう」

というイベントを、塾生だけでなく、外部生も対象に行うのです。
小学生は無料の食べ物には弱いので、生徒は集まります。もちろん、そこですぐに彼らが入塾してくれるわけではないのですが、一度行ったことがあるということで、「入塾への心理的コスト」は小さくなるのですね。
こうして接点を持った生徒には住所を聞いて置いて、ことある事にイベントや講習の案内を配布し、後の入塾につなげるわけですね。

当塾の場合の話です。
正直、私はこんなところで余計な労力はかけたくありません。理科の実験教室なんて、成績に繋がらないものはやりたくありません。
しかし、外部性を塾に引き込むためのイベントは当塾でも毎回少しずつやっています。


です。
これを、夏休みなどの長期休暇のたびに行っています。
要するに長期休暇の前半で学校の宿題を終わらせてしまおうというイベントです。
これを行うことによって、学校の課題を早めに終わらせて、塾の講習や本人にあった勉強に集中してもらおうというものです。
ついでに友達を連れてきてもらうことで、集客にも繋がります。
うちの場合は来てくれた生徒に案内を送りつけたりしないので、名前以外に住所などを聞いたりはしないですけどね。
うちの塾の場合は、まだ一年目ですがちゃんと生徒の成績上げて評判作ってますし、それほど手間書けなくても、生徒は集まってくれる。はずです(笑)
これは、生徒の学力向上にも繋がりますし、一石二鳥の良いイベントだと自負しております。
さらに言えば、勉強を教えるだけなので、準備もまったく必要が無いので気軽に実施します。

クリスマス会的なものは、前職の塾でやって私も楽しかったですし、またいつかやろうかなあ。などとも。
本年度は準備する時間がとれなさそうなので、見送りです。
どうせやるなら、ちゃんと準備して生徒にほんとうに楽しんで貰える内容にしたいですしね。


● 生徒の成績について

中土井氏 …… 成績は上がらないのが普通 塾はせいぜい成績維持機関

森塾 …… 上がる生徒も下がる生徒もいる しかし、平均では確実に上げる

塾にいっても成績を上がるとは限らない。
それは中土井氏も森塾も共通する考えです。ただし、成績を上げることへのこだわりは森塾の方がずっと強いです。そこだけに力を入れていると言うべきでしょう。ただし、森塾は基本的にあらゆる生徒に同じ指導をして、成績を上げやすい生徒の成績を、上げやすいところで上げるという方針です。
森塾はミドル層か、そのやや下をターゲットにしていてそれ以外の生徒はばっさり切り捨てている感じではあります。
森塾の理念というのは、生徒も講師も教室長さえも、ひとつのコマとして扱っているようなところがあります。素晴らしく合理的ではあるのですが。
中土井氏に関して言えば、もっと極端です。生徒の成績は上がらないことの方が多い、と断じた上で、その中で生徒や保護者との信頼関係を築く手法を模索しています。例えば、本日中土井氏が紹介してくれた手法では、次のようなものがあります。

--------------------
「いいかー
 この問題を家に帰って、お母さんに出して、ちゃんと解けるか勝負してみろ。
 それでお母さんが解けなかったら、教えてあげるんだぞー。
 人に教えるのが一番の勉強になるからな」
--------------------

という授業をするのだそうです。
「人に教えるのが一番の勉強」というのは、嘘ではありませんが方便です。
実は裏があります。
これをやらせることで、生徒は「家で塾や勉強の事を話すようになる」のです。
そして保護者は「子どもが、今まで勉強のことを言わなかった子が変わった!」と感動するのです。
ほんとうにあざといですが、巧いですね。

● 広告について

中土井氏 …… 新聞の受講率は下がってるが、まだまだ必要。開校時は自分でポスティングもしろ。

森塾 …… 税金対策でいちおうチラシは入れるがちょっとだけ

チラシを撒けば、生徒が集まるというのはある程度は正しいようです。
中土井氏は、4000枚撒けば1人の問い合わせが普通と言われてました。
私が神奈川で教えていたときは、1万~2万枚に1人と聞いていましたが、おそらく都市部の方が競争が激しくて率が下がるのでしょうね。これは地域柄が大きいでしょうね。

それでも、いくらチラシを撒いても、内部がしっかりしていないと、問い合わせや入塾には繋がらないというのが中土井氏にも森塾にも共通する考えのようです。当たり前ですね。

当塾も夏休み、冬休み、春休み前に新聞業者やポスティング業者などにたのんでチラシを入れて貰っています。大手塾ほどお金はないので、少量ではあるのですが。
これで開校して約一年ですが、開校3年間はできるだけチラシも入れて、それ以降はなるべく口コミのみで生徒数を維持していきたいというのが開校当初からのプランです。


いろいろ比較してみましたが、より詳しくは実際にセミナーを聞きに行くのが一番です。
行かれたことのない塾関係者は是非。

また、中土井氏の森塾も共通していえるのは、

指導力や受験知識・指導経験が不足していても実戦できる

というところでしょう。
たぶん、森塾のやり方でも、中土井氏のやり方でも、やる気さえあれば脱サラしたてで塾を開業した素人室長実戦できちゃいます。
森塾の社員はよほど労働条件がきついブラック企業なのか若い新人ばっかりですし、中土井氏のコンサルするのも、ノウハウ無しでいいかげんに起業して失敗したダメな塾が多いのでしょう。
(などと、勝手に失礼な想像をしてしまいます)

森塾や中土井氏のノウハウはたいへん勉強にはなりますが、当教室ではそれをそのまま真似だけしようと思ってはいません。

例えば、進路指導については私は塾人のなかでもわりと勉強している方です。
もちろん、予備校の先生ほど大学受験には詳しくないですし、中学受験専門塾ほど中学受験に精通しているわけではありませんが。ですが凡百の塾よりは、ずっと真面目に進路指導を考えています。
教務面についても、集団指導の一斉塾での指導経験もあり、いろいろな他塾の研究もしていますし、自分の能力の不足を補うために勉強をしています。教務面のこだわりが高じて、採算を取る目途もないのにオリジナル教材(受験社会)を作っちゃったりもしています。

私がいるからできる、他塾には真似できない高い指導も、特定の部分実現可能だと考えています。
(といっても、基本的なシステムは森塾のフォレスタのシステムをそのまま使わせてもらっているのですけども)
塾の仕事は「生徒の成績を上げること」というのは、森塾の理念に私は賛成です。
これで開校1年が経ちました。生徒数もそれなりに集まって、安定した経営をしていく目途もたちました。
良い塾を作っていくために気持ちを引き締めていきます。

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