2013年12月3日火曜日

天秤図を使ってみよう

算数のテクニックの1つで、「天秤図」があります。

中学受験でとくに良く教えられるテクニックですが、
これはとても便利です。

Q1
濃度20%の食塩水と、濃度30%の食塩水を混ぜて、24%の食塩水を500g作ります。20%の食塩水と30%の食塩水はそれぞれ何グラム必要ですか。
この問題に対して、ほとんどの中高生は連立方程式を用います。

x + y = 500
0.2x + 0.3y = 0.24×500

これを解いて

x=300 y=200

ですね。
けれども、この問題には天秤図を用いて考えると、一瞬で解けます。
頭の中で天秤図が書ける人なら、問題を読み終わった瞬間には解けているでしょう。


こんな図ですね。

この天秤図というのは、食塩水の問題への利用が中学受験では有名ですが、実はいろいろと応用が利くのですよね。
だいたいは、2つのものを混ぜたり平均を求めたりする問題に利用できます。

Q2
3年2組の男子の平均身長は100cmです。女子の平均身長は120cmです。3年2組に男子は30人、女子は20人います。3年2組全体の平均身長は何cmでしょう。
この問題の標準的な解き方(公立の小中で教えられる解き方)は、男女の合計の身長を求めて計算する方法です。

(100×30+120×20)÷(30+20)=108

108cm

この問題も天秤図を用いると一瞬です。


高校の物理や化学でも便利に使えます。

Q3
塩素原子は質量数35と質量数37の同位体が存在します。
塩素の原子量は35.5とすると、質量数37の同位体の存在割合を求めなさい。

これも標準的には方程式で解くのですよね。

35(1- x )+ 37x =35.5

これを解いて、

x = 0.25  よって、25%

やはりこれも、天秤図を用いると暗算で一瞬で解けてしまします。


この図から、37の同位体の存在率は1/4とすぐに分かります。

このように、天秤図非常に便利なものなのですが、公立の小学校や中学校では教えられません。
しかし、これは当然と言えば当然で、天秤図というのは「計算が非常に平易で簡単」である反面、「概念が難解」なのですよね。
その点、方程式というのは、計算は面倒になりがちですが、汎用性が高くて方程式の概念さえ理解できればおそろしく広い種類の問題に対応できるという特徴があります。

例えば、食塩水の問題に限って利用を説明するなら、成績下位の生徒でも簡単に理解できて使えるようになるでしょう。しかし、それだけでは全く不十分なのですよね。
天秤図の本質を理解し、自分なりに工夫して上述のような様々な問題に応用できるようでなければ天秤図を学ぶ意味はありません。


中学受験をする生徒は、応用力の低い生徒でも天秤図を学びます。
そして、中学受験で点数を取るためだけに用いて、後には何も残りません。

逆に、中学受験をしない生徒は応用力の高い生徒でも天秤図を学ぶ機会はないのですよね。

もちろん、こうした応用力というのも才能ばかりの問題ではなく、訓練によって伸ばすことができるものではあるのですが、こうした機会の不均衡は非常に惜しい気がします。
この天秤図の概念を学ぶのには公立学校では、高校数学の「内分・外分」を待たなくてはいけないのですよね。それも、上述のような応用と結びつけられて教えられることはありません。
私自身は子供自分、算数が好きで中学受験をするわけでもないのに自分で勝手に本を読んで学んだものですが、そうやって自分で機会を作り出せる生徒は稀なはずです。こういうのを学ぶことのできる機会は、中学受験をしない生徒に与えられるようになったら良いなあ思うのです。

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