2012年11月26日月曜日

本当は間違っている個別指導

よくある個別指導塾での風景

中学3年生の生徒と保護者が、入塾の説明を受けに来ています。

保護者 「うちの子は、本当に基礎から分かっていないんですよ。学校の授業なんてまるでついていけなくて、宿題も出せていないんです」

塾の先生 「そうですか。では、分からないところまで戻って勉強していきましょう。
○○くんは、この進度表のどのあたりくらいまでなら自信があるかな?」

生徒 「うーんと、一般動詞の現在形は三単現のSがないやつなら大丈夫だけど、三単現のSが入ってくるといちおう分かるけど、ちょっと自信がない感じ。
過去形とかもいちおう分かっているけど、あんまり自信がないや。
不定詞とか受け身とかは、もうチンプンカンプンだよ」

塾の先生 「なるほど。分かりました。
勉強は基礎をしっかりと固めていくことが大切ですから、1年生の三単現のSの単元に戻って、そこから勉強していきましょう」

こうした指導をする塾はダメな塾です。
サイテーな指導方針です。

生徒の学習状況に応じた学習指導ができることが個別指導塾の強みですし、大切なことです。
ですが、上述のような指導の仕方では学習の成果はでにくいです。塾での指導というものが分かっていないと言わざるを得ません。
(※ しかし、こうした素人考えのイイカゲンな指導をしている個別指導塾も少なくないのが現状です。残念なことだと思います。)

上記のような指導方針がどこがダメなのでしょうか。
また、上記のような生徒をどう指導すべきなのでしょうか。

結論を言うなら、
学校の勉強についていけてない生徒は、学校の進度に合わせた学習指導をすべき
なのです。

1年生の内容が不完全ならば、その単元にもどって復習していくという指導方針は、そこだけ聞くと間違っていないように思えます。恥ずかしながら、私も学生時代に行っていた家庭教師のアルバイトではそのように教えてしまっていました。
そうした指導も、不登校で学校に通っていない生徒ならばありなのかもしれません。
しかし、普通の生徒には学校の授業があります。学校の授業と塾の授業で、まったく異なった単元を扱うことはデメリットが大きいです。扱う単元が異なると、生徒は混乱してしまいます。
また、生徒は週に何コマも同じ教科の授業を授業で受講することができるわけではありません。週1回の授業だけで、1年生の単元に戻って授業を進めてもいつまで経っても学校の進度に追いつくことはできません。不可能です。塾の授業よりも学校での授業の方が多いのですから。
単元を戻って授業を行えば授業は行いやすいですし、そのときだけ「分かった」と思って貰えることは簡単です。けれど1週間後には忘れてしまっているでしょう。また学校の授業と連動もしていませんので、学校の成績も上がらず、「塾で勉強しても成績があがらない。塾で勉強しても無駄だ」「勉強しても成績が上がらないのは、ボクがバカだからなのかな」などという気持ちを生徒に抱かせてしまいます。

繰り返し何度でも言いますが、学校の進度に合わせた学習指導をすべきなのです。
生徒の学習状況に合わせた指導は、その範疇で行うべきです。三単現や過去形がうろ覚えの生徒でも、簡単な現在完了形の問題は解くことくらいできます。1次方程式や連立方程式があやふやな生徒でも、二次方程式の解の公式は使えます。生徒の学習状況に応じて、学校の進度にあった範疇で指導内容を適切に設定するべきなのです。
学校の予習や復習(当塾では予習がベストだと考えていますが、復習型で考えている塾もあるでしょう)をしっかりしてもらうことで、生徒には混乱することなく勉強してもらい、学校の成績を上げてもらって、「勉強すれば、ちゃんと分かるし、成績も上がるんだ」ということを分かってもらいましょう。前学年の戻り学習などは、学校の授業が進まない夏休みや冬休みなどを使って行うのが良いでしょう。

九九ができないのに二次方程式とか、アルファベットが書けないのに現在完了形などというのは流石に無理がありますが、塾での指導は迂闊に進度をぶらさないことが大切です。

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