2012年11月29日木曜日

教材マニアックス9「論理エンジン」


今日は論理エンジンという少し独特の教材を紹介します。

出口汪という開発したテキストで、市販されている姉妹教材も人気があるようです。
今日紹介する「論理エンジン」は塾教材で、テキストのみでの市販はされていないのですが、ビデオ授業とのセット販売での市販購入はできるようです。

インターネットで検索すると、いろいろな塾で採用されているようで、多くの広告文を見ます。
論理エンジン公式HP http://www.ronri.jp/もあるのですが、ただこちらも成果が出るといった謳い文句はたくさんあるのですが、具体的にどういう趣旨のテキストなのかさっぱり分かりません。

よい教材であるのならSSS進学教室でも採用したいですし、かねてよりの興味もありましたので、さしあたり1セットだけ取り寄せてみました。


論理エンジン
基本情報
教材名 : 論理エンジン 
出版社 : 水王社
シリーズ対応教科 : 国語
製本 : B5
特徴 : 論理的思考力を鍛えるためのテキスト


1.教材の構成

レベルごとのテキストになり、小学生でも高校生でも必ず一番下のレベルから演習していきます。

OS1 (レベル 1~10)
OS2 (レベル11~20)
OS3 (レベル21~30)
OS4 (レベル31~40)
OS5 (レベル41~50)

また、各OSでは2冊ずつの教材を使います。

論理の習得
誌上講義

の2冊です。
論理の習得がメインの教材になり、誌上講義が補助冊子という位置づけのようです。

論理の習得の内容
端的な解説+問題演習

















誌上講義の内容
参考書と、別冊となる問題集の2部構成です。
参考書の方は実況中継系の参考書になっていて、これを読めば授業を受けるのと同じでしょう。まさに、「誌上講義」といえるでしょう。また誌上講義・問題編として、問題集が別冊として付いてきます。
















水王社に問い合わせたところ、教材の使い方は各学習塾におまかせで、このように使わなければならないというマニュアルはないそうです。
しかし、標準的な使い方としては、

塾の授業 → 塾で「論理と習得」を用いて授業を行い、演習をする。
宿題 → 「誌上講義」を用いて授業の復習をして、問題編を宿題として演習する。


というのがスタンダードのものとして、想定しているようです。

また、OSシリーズの次のレベルとして、PSシリーズがあります。
加えて市販もされている、小学生向けのテキストもあります。

2.教材の趣旨

ただ国語の問題を解くだけではなく、論理的に文章を読み、論理的な思考法を身につける訓練をするアイテムとして作られた教材です。

主語述語の関係、修飾語の関係、指示語などといった「文」の論理から初めて、論説文などの論理構成を把握する「文章」の論理について学びます。


3.感想・評価

以上は客観的な内容ですが、ここからは私の個人的な見解です。

国語は論理
国語を学ぶ上でもっとも大切なのは論理的思考法であるというコンセプトは本当に素晴らしい。
特に、物事を論理だてて考えることができるというのは、レベルが上がるほどに要求されるものになります。
私事になりますが、私は子供の頃は漢字の書き取りのせいで国語が大の苦手でしたが、高校に入るあたりで物事を論理的に考える習慣を身につけてから小論文や国語のテストは得意に変わった経験があります。論理的な思考力を鍛えるというのは、国語を学ぶ上でもっとも大切な技能でしょう。

これは、私の勝手な解釈なのですが、以前に総合的国語力についての記事をブログでも書きました。

総合的国語力
① 考える力 (文章を読んで理解し、自分の意見を持つ力)
② 表現する力 (自分の意見や考えを文章にする力)
③ 語彙やレトリック、国語的知識や一般的な知識(常識や別教科の知識を含む)

論理エンジンでは、特に上の2つについて力点を置いて鍛えていきます。
従来の学習塾や学校での国語指導では、③については教えやすかったのですが、①②については自助努力にまかせていたところが大きいでしょう。
そういう意味では、論理エンジンは非常に画期的なテキストといえるでしょう。

演習問題は易しいが、要求されているレベルは高い
問題を解く意義を、生徒が自分で理解しなければならない

論理エンジンの問題自体は非常に平易です。解くだけなら、本当に小学生からでも始められます。
しかし、実際にはこのOS1のレベルが適当なのは優秀な中学生か平均的な高校生でしょう。

このテキストはただ漠然と解くのではなく、テキストの趣旨を生徒がきちんと理解して、その趣旨にそった高い意識を持って演習しなければ意味がありません。
誌上講義では、ただ問題の解説をするだけではなく、なんのためにその演習を行うのか、どういう意識で問題に取り組むべきかがクドイほどに繰り返されています。ですが、それは必要だからこそ繰り返されているのです。
むしろ、問題演習を通じて、誌上講義で語られている内容を理解し身につけることが大切なのでしょう。


塾でどう使うかは悩みどころ


塾で上手に使うのはだいぶ難しいようにも思えます。
「論理の習得」を用いて、「誌上講義」とおおむね同じ内容を生徒に伝えて、演習して貰うというのが基本にはなると思います。「誌上講義」の内容は素晴らしいものがあります。
しかし、「誌上講義」で書かれている内容というのは、高度なものです。生徒というのは、口頭での指示は文書での指示よりもずっと伝わりにくいのです。端的に説明するのが基本です。それを考えると、十分な指示を出すのは難しいようにも思えます。
また当塾のような個別指導塾で使うとすると、さらに指導方法はよく考えなければならないでしょう。一斉授業で使うにしても、理解や演習のペースは人それぞれなのですから、また別の難しさが予想されます。
ビデオ授業での販売もされているようですが、このテキストはビデオ授業とのセットでの使い方が最適になるように作られているのかもしれません。
(個人的にはビデオ授業というのは上手に使いこなせない良いのですが、それができない生徒が多いと思っています)

論理エンジンは非常に優れた教材なのは間違いないのでしょうが、当塾での採用は当面見送りです。もう少し使用法を煮詰めて、できれば上手に使えている既存の塾を見学させてもらったりした上で改めて検討することになるでしょう。

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